Difyのエンタープライズプランを解説!機能・料金・導入事例を紹介

AI活用が企業の競争力を左右する時代において、Dify エンタープライズは大規模組織のAIトランスフォーメーションを支える包括的なソリューションです。30万以上のLLMアプリケーション構築実績を持つDifyプラットフォームのエンタープライズ版は、単なる開発ツールを超えた戦略的なAIインフラとして機能します。

本記事では、年間$150,000の投資に見合うDify エンタープライズの機能、他プランとの違い、そして導入を検討すべき組織の特徴について詳しく解説します。

目次

Difyのエンタープライズプランとは

Difyのエンタープライズプランは、大規模言語モデル(LLM)を活用したAIアプリケーションの構築、デプロイ、管理を企業レベルで実現するためのプランです。オープンソース版のDifyが持つ強力な機能群に加えて、企業運用に不可欠なセキュリティ、スケーラビリティ、ガバナンス機能を標準装備しています。

Difyは、ビジュアルワークフローオーケストレーション、RAG(Retrieval-Augmented Generation)エンジン、AIエージェントフレームワーク、包括的なモデル管理機能が含まれています。これらの機能により、プログラミングの専門知識を持たないビジネスユーザーでも、直感的な操作で高度なAIアプリケーションが構築可能です。

料金・プラン比較

Difyは利用者の多様なニーズに応えるため、クラウド版とセルフホスト版の両方で複数のプランを提供しています。次に、クラウド版とセルフホスト版のプランの比較表を示します。

クラウド版プラン

クラウド版では、無料のSandboxプランから月額$159のTeamプランまでは、Difyがホスティングするクラウド環境で提供されています。主にメッセージクレジット数、チームメンバー数、ストレージ容量の違いで差別化されており、セットアップや運用の手間なく基本的なAI開発機能を手軽に利用できます。次の表は各プランの概要です。

プラン料金主要特徴対象ユーザー
Sandbox無料200メッセージクレジット、機能制限あり試用ユーザー
Professional$59/月5,000メッセージクレジット、3名まで個人・小規模チーム
Team$159/月10,000メッセージクレジット、50名まで中規模チーム

セルフホスト版プラン

セルフホスト版は、ユーザー自身のインフラ環境でDifyを構築運用するプランです。コミュニティプランは完全無料で基本機能をフル提供しているものの、インフラ管理や運用は利用者が管理します。AWS Marketplace上のDify プレミアムおよびDifyエンタープライズプランは、AWS基盤上での専用環境を提供し、より高度な要件に対応しています。次の表は各プランの概要です。

プラン料金主要特徴対象ユーザー
コミュニティ無料基本機能フル提供、自己運用個人開発者、学習者
Dify プレミアム(AWS)$0.30/時間AWSインフラ基盤、時間課金制特定要件企業
Difyエンタープライズプラン(AWS)$150,000/年
(要問い合わせ)
エンタープライズ機能フル装備大企業・規制業界

エンタープライズ限定機能

Difyエンタープライズプランでは、企業運用に不可欠な高度な機能群を標準装備しています。ここでは、その機能を解説します。

セキュリティ・認証(SSO、監査ログ、暗号化)

1つ目はシングルサインオン(SSO)連携です。SAMLおよびOIDCプロトコルによる企業内アイデンティティシステムとの完全統合が可能です。Azure AD、Okta、Google Workspaceなどの既存認証基盤をそのまま活用でき、パスワード管理の負担軽減と退職者のアクセス権自動削除が実現します。

また包括的監査ログ機能を使えば、すべてのユーザーアクション、データアクセス、システム変更が詳細に記録できます。これは金融業界のSOX法対応や医療業界のHIPAA要件など、厳格な規制環境でも安心して運用できる監査証跡機能です。

さらにエンドツーエンド暗号化は通信データの保護にTLS 1.3を採用し、保存データにはAES-256による暗号化を標準実装しています。暗号化キーの管理には、AWS KMS、Azure Key Vault、HashiCorp Vaultとの連携をサポートしており、企業の既存セキュリティ基盤との統合が可能です。

企業級管理(無制限ワークスペース、カスタムロール)

2つ目は無制限ワークスペース機能です。部門別・プロジェクト別に独立したワークスペースを制限なく作成できます。マーケティング部門、営業部門、開発部門がそれぞれ独自のAIアプリケーションを開発しながら、機密情報の適切な分離を維持できる環境を提供します。

カスタムロール管理によって、標準的な管理者・編集者・閲覧者の枠を超えて、組織の階層構造に合わせた細かな権限設定が可能です。「プロンプト編集のみ可能」「データ閲覧のみ可能」といった業務に特化した権限設定を使えば、セキュリティと生産性を両立できます。

中央集権的ユーザー管理では、複数のワークスペースとユーザーを一元的に管理し、組織全体でのガバナンス体制の構築が可能です。AI活用の統制と標準化を実現しながら、各部門の自律性も確保できます。

専用サポート・SLA

3つ目は専用サポートチャンネルとして、専用Slackチャンネル、電話、メールによる技術サポートを提供します。加えて、導入時のアーキテクチャ設計支援、運用開始後のパフォーマンス最適化まで、包括的なサポートを受けられます。

SLA(サービスレベルアグリーメント)は99.9%以上の稼働率保証も契約時に可能です。ミッションクリティカルなAIアプリケーションの運用において、必要な信頼性レベルを確保できます。

ターゲット組織と導入事例

Difyのエンタープライズプランは特定の組織特性を持つ企業に最大の価値を提供しています。ここではエンタープライズプランを契約した企業の事例を紹介します。

製造業:株式会社リコー(全社AI民主化)

株式会社リコーは全社的なAI活用を加速し、特にデジタルサービス事業部門を中心に「市民開発」を推進する目的でDify エンタープライズを導入しました。LangGenius社とのエンタープライズ契約を締結し、エンジニア以外の従業員でもAIワークフローやRAG検索ボットを開発できる環境を整備しています。

リコーでは社内外のFAQ対応、議事録生成、データ分析、メール監査、契約書チェックなどの活用から、新規ビジネス機会の発見やリスク予見の迅速化、経営判断支援の強化を実現しています。さらに、自社開発のオンプレミスLLMとDifyを組み合わせ、セキュアなプライベートAIソリューションの構築も進めています。

自動車:Volvo Cars(戦略的AI活用)

グローバル自動車メーカーのVolvo Carsは、AIの最前線を戦略的にナビゲートする上で「不可欠な価値」をDifyから得ていると評価しています。同社のAI&ML部門では、Difyの直感的なインターフェースにより、複雑な自然言語処理パイプラインを迅速に設計・デプロイし、製品の品質向上とコスト・市場投入時間の削減を実現しました。

まとめ

Dify エンタープライズは、年間$150,000の投資により、大規模組織向けの高度なセキュリティ・ガバナンス機能、99.9%稼働率保証、専用サポートを提供します。30万以上のアプリケーション構築実績に基づく技術的信頼性と、リコーやVolvo Carsでの実際の導入成果により、組織のAI民主化と中央集権的管理を両立する戦略的AIインフラとして機能します。従業員1,000名以上の大企業、規制業界、高度なセキュリティ要件を持つ組織にとって、AIトランスフォーメーションを成功に導く重要な投資選択肢となるでしょう。

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